大学院入試の研究計画書の書き方・例文|先行研究・参考文献・構成
研究計画書は、壮大な結論を約束する文書ではなく、何を、なぜ、どの方法で、どこまで明らかにするかを読み手が検討できる形にする文書です。まず志望研究科の指定様式を優先し、その枠内で論理をつなぎます。
大学院入試の研究計画書は、研究目的、背景・先行研究、研究方法、期待される成果の順に組み立てます。例文はそのまま写さず、対象・問い・根拠・方法の対応を読むために使います。先行研究は要約の羅列にせず、本文の引用と参考文献一覧を一致させ、文字数と指定項目は志望大学院の最新様式を最優先します。
最初に募集要項と指定様式を固定する
大学院ごとに文字数、様式、記載項目、提出方法が異なります。先に本文を書き始めると、最後に構成を削り直すことになりがちです。募集要項、研究計画書の様式、出願書類一覧を同じ年度でそろえ、制約を一枚に転記してください。
確認するのは、文字数または枚数、図表の可否、参考文献を文字数に含むか、ファイル形式、匿名化の要否、提出期限です。不明点は推測せず、志望研究科の入試担当窓口に確認します。
- 志望する課程・選抜区分・入学年度が合っている
- 指定様式と文字数・枚数を確認した
- 提出形式と締切時刻を確認した
- 研究指導を希望する教員の最新の研究分野を公式ページで確認した
4つの問いで骨格を作る
放送大学の作成指針では、研究の目的、背景・先行研究、研究方法、期待される成果が主要項目として示されています。この4項目を一文ずつ書き、矛盾がないことを確認してから肉付けすると、説明が散らかりにくくなります。
目的:何を明らかにするか
対象、現象、比較軸を入れ、研究後に何が分かれば目的を達成したと言えるかを一文にします。
背景・先行研究:何が既に分かり、何が残っているか
問題意識だけで終えず、代表的な先行研究と未解決点をつなぎ、自分の問いが必要な理由を示します。
方法:その問いに答えられる手順か
対象、資料・データ、収集方法、分析方法、期間を具体化します。人を対象とする場合は倫理審査や同意取得の必要性も確認します。
期待される成果:どこまで到達するか
結果を先取りせず、明らかにできる範囲と学術的・実践的な意味を分けて書きます。
研究計画書の先行研究・引用・参考文献を一つの流れにする
先行研究は、読んだ文献数を示す欄ではありません。JAISTの研究計画書ガイドが説明するように、既存研究を調べ、何が分かっていて何が残っているかを示し、その未解決点から自分の研究上の問いを導きます。全国共通の最低文献数や引用形式はないため、志望先の指定様式と研究分野の慣行を優先してください。
検索結果や一般向け解説だけで先行研究を構成せず、原著論文、レビュー論文、学術書、大学・官公庁等の一次資料を区別します。CiNii Researchなどで候補を探した後、実際の本文を読み、著者、題名、掲載誌・書名、年、巻号、ページ、DOI等を原資料と照合します。入手できない文献や存在を確認できない文献を、読んだ資料として記載しないでください。
検索語とデータベースから候補を集める
研究対象、主要概念、方法、類義語を組み合わせ、CiNii Researchや志望分野の学術データベース、大学図書館で候補を探します。検索結果の件数は研究の質や必要文献数を示すものではありません。
一件ずつ問い・方法・結果・限界を一行にする
題名や要旨だけで判断せず、本文を読み、研究上の問い、対象・データ、方法、主な結果、著者が示す限界を分けて記録します。自分の解釈は文献の記述と区別します。
既知と未解決を分ける
複数の研究で一致している点、見解が分かれる点、対象・時期・方法のためにまだ検討できていない点を整理します。単に『研究が少ない』と断定せず、確認した範囲を示します。
未解決点を自分の問いと方法へ接続する
未解決点のうち、志望課程の期間と研究環境で扱える一つを研究目的にし、その問いに答えられる資料・対象・分析方法を置きます。先行研究の紹介だけで研究目的を終えません。
本文の引用と参考文献一覧を照合する
本文で引用した資料が参考文献一覧にあり、一覧にある資料が本文のどこで使われたかを確認します。表記順、句読点、DOI・URL、参照日等は志望先の指定に合わせます。
- 実在と書誌情報を原資料または学術データベースで確認した
- 題名・要旨だけでなく、引用する箇所を含む本文を読んだ
- 著者の主張、研究結果、自分の解釈を分けて記述した
- 既に分かっていることと未解決点を分けた
- 未解決点から研究目的と方法が論理的につながっている
- 本文中の引用と参考文献一覧が一対一で対応している
- 志望先が指定する引用・参考文献形式を確認した
研究テーマが決まらないときは、対象・問い・資料・方法を仮置きして狭める
【院試クラウド編集部の提案】テーマが定まらないときは、関心のある現象や対象を一つ書き、先行研究で分かっていることと未解決点を分けます。次に『誰・何を、どの条件で、何と比較するか』を問いとして仮置きし、実際に入手できる資料・データと使える方法へ落としてください。仮置きは思考の手順であり、未完成の計画をそのまま提出してよいという意味ではありません。
候補は、修士期間内に扱える範囲か、研究倫理上の手続を見込めるか、志望教員の現在の指導領域と研究環境で実施可能かを照合して狭めます。教員の研究テーマと単語が一致するだけで指導可能性が保証されるわけではなく、研究科の指定様式と公式の評価項目を優先します。
- 関心のある現象・対象を一つの文にした
- 代表的な先行研究と未解決点を分けた
- 対象・条件・比較軸を含む問いを仮置きした
- 利用できる資料・データと方法を対応させた
- 修士期間、研究倫理、設備を含む実行可能性を確認した
- 志望教員が当該課程で現在指導可能か公式情報で確認した
初稿は『問い→根拠→方法』の順で作る
最初から導入文を磨く必要はありません。研究上の問いを仮置きし、その問いが必要だと示す先行研究を並べ、答えるための方法を置きます。問いと方法が対応してから、タイトル、背景、期待される成果、研究スケジュールを整えます。
例えば『AがBに与える影響を明らかにする』なら、AとBをどう観測し、どの対象と比較し、どの分析で影響を判断するのかが必要です。方法で答えられない問いは狭め、問いに不要な方法は削ります。
研究計画書の例文は、弱い初稿と改善版を並べて構造を読む
以下は、研究計画書の構造を説明するために院試クラウド編集部が作成した架空の例です。特定大学の合格例でも、そのまま提出できるテンプレートでもありません。大学・地域・年度・資料名は自分の計画に合わせ、実在、入手可能性、利用条件を一次資料で確認してください。
例の題材は『自治体立図書館の児童向けイベント告知』です。公開情報の記載内容を比較する計画に限定し、参加者の理解度やイベント効果までは測定しません。問いで約束する範囲と、方法で確認できる範囲を一致させることが目的です。
テーマ:関心だけの表現を、対象と比較軸のある問いへ直す
弱い初稿:『地域の図書館イベントを活性化する研究をしたい。』/改善版:『A県内の自治体立図書館が2024年度に公式サイトで公開した児童向けイベント告知を対象に、対象年齢、申込方法、定員、参加上の配慮事項の明示状況を比較する。』/変更理由:価値判断の語を研究目的にせず、対象、期間、資料、比較項目を明示しています。
先行研究:『研究が少ない』を断定せず、確認範囲と未解決点を示す
弱い初稿:『図書館イベントの告知に関する研究は少ない。』/改善版:『図書館の情報発信を扱う先行研究[著者名, 年]は媒体と利用者接点を検討している。一方、本計画で確認した文献の範囲では、自治体立図書館の公式サイト上の告知項目を同一基準で比較した検討は確認できていない。』/変更理由:未確認の全研究を否定せず、既知、確認範囲、残る問いを分けます。角括弧は構造説明用のプレースホルダーで、提出時は実際に読んだ文献の正確な書誌情報と引用へ置き換えます。
目的:成果を先取りせず、何を明らかにするかを固定する
弱い初稿:『分かりやすい告知方法を明らかにし、参加者を増やす。』/改善版:『対象ページにおける4項目の記載有無と記載位置を整理し、自治体間で共通する点と異なる点を明らかにする。』/変更理由:公開ページの比較だけでは参加者数への因果効果を判定できないため、実際に観察できる範囲へ目的を狭めています。
方法:対象の選び方、記録基準、再確認手順まで書く
弱い初稿:『各図書館のサイトを調べて比較する。』/改善版:『2024年度中にA県内の自治体立図書館公式サイトで公開され、開催日と児童向けであることを確認できる告知を対象とする。除外条件を先に定め、取得URLと確認日を保存し、4項目の定義をコード表にして記録する。判断が曖昧なページは期間を空けて再確認し、判断理由を残す。』/変更理由:資料の含め方と分析の再現性を読み手が検討できるようにします。公開情報でも転載条件と個人情報の有無を確認します。
限界:方法で言えないことを先に区切る
弱い初稿:『この研究により効果的な広報が実現できる。』/改善版:『本研究は公式サイトの記載内容を比較するもので、閲覧者の理解、来場行動、告知以外の広報経路の効果は直接検証しない。対象年度やページ更新・削除による資料の偏りも限界として記録する。』/変更理由:結果を保証せず、追加調査が必要な範囲を明示しています。
- 例文の大学名・地域名・資料名を自分の事実へ置き換えた
- 対象、期間、比較軸、資料、方法が一つの問いに対応している
- 実際に読んでいない文献やプレースホルダーを参考文献に残していない
- 方法で測れない効果や因果関係を成果として約束していない
- 対象の選定・除外条件、研究倫理、著作権、実施可能性を確認した
提出前は内容と形式を分けて点検する
内容の点検では、問いが一つに絞れているか、先行研究から問いが導かれているか、方法で問いに答えられるかを見ます。形式の点検では、指定項目、文字数、引用、ファイル名、ページ番号を確認します。同時に直すと見落としやすいため、二回に分けてください。
- タイトルを読めば対象と論点が分かる
- 研究目的が一文で説明できる
- 先行研究の要約と自分の主張を区別して引用している
- 研究対象・収集方法・分析方法・期間が対応している
- 実施可能性と研究倫理上の手続きを確認した
- 募集要項と指定様式を最後にもう一度照合した
研究計画の初稿を受験準備に組み込む
研究計画の初稿は、筆記の勉強が終わる前に用意しましょう。先行研究の読み直しや方法の変更に時間を残し、提出した内容を口頭でも説明する練習へ進めます。
大学別の具体例
大学・専攻ごとの指定書式や試験内容を、公式資料に基づく記事で確認できます。条件は記載年度・確認日時点のもので、現在の募集状況は各大学の最新案内を確認してください。
東京大学 · 技術経営戦略学専攻
第3章 4ページ調査票を研究計画へ変える
指定4ページの調査票で、研究の問い・比較条件・研究方法をどう配置するか。
2027年度入試 · 公式情報の確認日大阪大学 · 比較公共政策専攻
第4章 経済系の研究計画書を組み立てる
経済系の研究計画書を、理論型と実証型の違いから組み立てます。
2027年度入試 · 公式情報の確認日
確認した公式・公的情報
記事の構成にあたり、以下の公式ページを2026年8月30日に確認しました。入試条件は年度・研究科・選抜区分で変わるため、出願時は必ず志望先の最新情報を確認してください。
- 放送大学「研究計画の作成」
目的、背景・先行研究、研究方法、期待される成果という公式の作成指針を確認できます。
- 國學院大學「大学院入試/出願書類」
研究科ごとに所定様式が異なる実例として、最新の出願書類を確認できます。
- 埼玉大学教育学研究科「研究計画書の作成参考資料」
大学院が受験者向けに公開している作成参考資料です。
- 東京大学 肱岡・藤井・中島研究室「研究テーマを仮決めする」
研究対象と研究方法を対応させて候補を絞る大学研究室の案内です。同研究室の助言を全国共通の入試要件には一般化していません。
- 北陸先端科学技術大学院大学 敷田麻実氏「研究計画書の書き方」
先行研究を調べ、既知の内容と課題を整理して研究目的へつなぐ考え方を確認できる大学教員の公開ガイドです。入試の指定様式は志望先を優先します。
- JASSO日本語教育センター「研究計画書の作成法」
研究計画を背景、先行研究、目的、方法等へ具体化する学習資料として参照しています。
- 東京大学大学院情報理工学系研究科「2027年度 研究計画書様式」
背景・目的、研究構想、研究分野の動向と位置づけ、参考文献を対応させる大学固有の指定例です。列挙した参考文献を本文で引用する旨も確認しました。
- CiNii Research
論文、研究データ、研究者情報等を横断して候補資料を探し、書誌情報を確認できる学術情報基盤です。検索結果だけで引用内容を判断しません。