第6章 研究計画と五分発表を入試制度へ合わせる
東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 修士課程の院試対策講座から、研究計画を抽象的な医療貢献で終わらせず、背景、問い、方法、評価、指導教員との関係を一続きにします。一般入試と特別口述で強調点を変えます。
- 対象年度
- 2027年度
- 公式情報確認
- 2026年8月28日
- 公開本文
- 4,733字
- 参照資料
- 14件
研究計画を六つの文で作る
専門外の面接者にも、実験の成立条件が分かる形にします。
本書の提案:背景、未解決点、仮説、方法、評価、意義
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
第一文で対象となる病気・生命現象・装置を示します。第二文で既存研究の限界を一つ示します。第三文で、何を変えればどの結果が変わると考えるか、仮説を書きます。第四文で試料、装置、操作、比較対象を含む方法を書きます。第五文で成功を判断する測定量を書きます。第六文で、その結果が診断、治療、基礎理解のどこへつながるかを書きます。
例えば「がんを治すナノ材料を作る」では広すぎます。「直径と表面電荷を変えた高分子ミセルを作り、腫瘍モデルで組織内浸透距離と細胞取り込みを比較する」と書けば、作る物、変える条件、測る値が分かります。大学がこの六文形式を指定しているわけではなく、本書が論理を確かめるために提案する型です。
本書の提案:方法には対照と代替法を入れる
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
手術ロボットなら、熟練者と初学者、手動と支援あり、実機とシミュレータを比較し、時間、誤差、組織への力などを測ります。1分子計測なら、変異体と野生型、基質濃度、回転速度、ATP生成量を対応させます。ナノ材料なら、粒径、表面特性、血中安定性、細胞・組織での分布を分けて測ります。
予定した測定ができない場合に、別の蛍光指標、画像解析、材料組成、モデル系へ切り替える方法も一つ用意します。口述では完成した答えより、研究が失敗したときに原因を切り分ける考え方が伝わります。
一般口述の五分と特別口述の約三十分を作り分ける
同じ研究計画を使っても、評価される部分を変えます。
本書の提案:通常口述の五分発表
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
五分を、背景四十五秒、未解決点と問い四十五秒、仮説四十五秒、方法九十秒、評価方法四十五秒、意義三十秒に分けます。最初の一分半で「何を、なぜ調べるか」が伝わり、中央の一分半で実験や計算が成立することを示す構成です。
スライドは、表題、背景と問い、仮説、方法図、評価と意義の五枚程度を目安にします。大学は枚数を指定していません。8月28日17時の提出後は改訂できないため、図中の軸、単位、略語、出典、氏名を提出前に確認します。
本書の提案:特別口述では第一志望との整合性を具体化
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
特別口述の発表も五分以内ですが、その後を含め約三十分あります。第一志望教員が使う方法と、自分が解きたい問いの関係を具体的にします。「この研究室は有名だから」ではなく、「フェムトリットル反応器で一分子ごとの差を数えられる」「患者モデルで手術技能を安全に定量化できる」「高分子自己組織化で粒径と表面を設計できる」のように、方法上の必然性を説明します。
質疑では、基礎学力、動機、論理、専門知識が評価されます。卒業研究と異なる分野を志望する場合は、今持つ技能、入学前に補う知識、最初に学ぶ測定を三段階で答えます。
出願までの準備を月ごとに置く
教員調査、英語、筆記、研究計画を同時に進めます。
本書の提案:出願前から九月までの準備順
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
二月から三月は、六分野と三十一名の指導候補を読み、数学・物理学・化学の過去問を一年度分ずつ見て選択科目を仮決定します。四月は第一志望を含む複数教員の研究を読み、特別口述を受けるなら事前相談を始めます。五月は英語受験・送付、成績集計表、研究計画、第十志望までの順位を完成させます。
六月四日までに出願し、七月は特別口述と英語提出を管理します。八月は選択科目を本番時間で解き、通常口述の研究計画とスライドを28日17時までに出します。特別口述選抜者も通常口述の練習を続けます。九月は、筆記対象者が選択科目を受け、全員が通常口述を受けます。これは大学の指定学習計画ではなく、公式日程から逆算した本書の提案です。
大学が公表していない情報を最後に分ける
2026年8月28日時点で該当する公開一次資料に記載がないため、数値や条件を推測で補っていません。
2027年度の研究室別受入人数、教員別倍率、合格最低点、英語三方式の換算式、通常口述の総時間、特別口述選抜者が受ける通常口述の個別内容、2027年度の確定時間割、2026年度過去問の公式解答・採点基準・出題意図、作問者は、公表資料から確認できません。
本書による説明:公式事実と提案を見出しと文章で分ける
複数の一次資料を比べ、受験生が制度と研究内容を一緒に読める形へ本書が整理した説明です。
公表されていない情報を推測で埋めることはしません。日程、試験方式、教員名、問題文は大学公式の事実として示し、科目選択、研究計画、時間配分、答案例は本書の提案として区別しています。
数学・物理学・化学のどれを選ぶか
研究室名だけで決めず、問題構成、時間、現在の基礎、研究方法を一緒に比較します。
大学公式の事実:三科目は問題数と試験時間が同じではない
大学が公表した募集要項、規則、教育資料、教員資料または入試問題に書かれた範囲です。
数学は、微分積分と微分方程式、級数・フーリエ解析と積分変換、線形代数、曲線・曲面、複素関数、確率・統計・情報数学などの六分野から六問が出され、そのうち三問を150分で解きます。物理学は力学と電磁気学の二問を120分で全て解きます。化学は物理化学、無機化学、有機化学の三問から二問を120分で選びます。物理学には問題選択がなく、数学と化学には選択があります。
本書の提案:選択の幅と全小問を書く力を同時に比べる
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
単純平均では、数学は一問五十分、物理学と化学は一問六十分ですが、実際には一問が複数の小問で構成されます。得意分野だけでなく、不得意問題を回避できる幅と、選んだ一問の全小問を通して論証する力の両方を比べます。
本書の提案:数学選択は三問の組合せを固定し過ぎない
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
数学を選ぶ場合、微分方程式、線形代数、確率統計のように研究でも使いやすい三分野を主力にしつつ、過去問では毎年六問全ての冒頭を読める状態にします。2026年度問題には、微分方程式、行列と固有値、複素関数、曲線・曲面、フーリエ解析、確率とエントロピーが並びました。年度により同じ順序や組合せが続く保証はありません。
研究計画では、画像再構成なら線形代数と最適化、手術ロボットなら微分方程式と制御、診断なら確率統計のように、入試数学を研究方法へ一文で結びます。ただし、数学を選んだこと自体が特定分野への配属条件ではありません。
本書の提案:物理学選択は二問とも完答する準備をする
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
物理学は力学と電磁気学の二問を全て解くため、「力学が得意なので電磁気を捨てる」という選択ができません。2026年度の第1問は、斜面と連結質点から始まり、飛び出した後の重心運動と回転へ進みます。第2問は電気双極子のポテンシャルなど、電磁気学の式をベクトルで扱います。
答案では、座標軸、正方向、保存則を最初に置きます。途中で糸の拘束条件や近似条件を使うときは、その条件を文章で残します。メカノバイオエンジニアリング、イメージング、超音波、センサを志望する受験生は研究との関係を説明しやすい一方、研究室希望とは別に、力学と電磁気学の両方を120分で書けるかを本番形式で確認します。
本書の提案:化学選択は生命系の知識だけでは足りない
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
化学を選ぶ場合、物理化学、無機化学、有機化学から二問を選べます。しかし、2026年度第1問の物理化学だけでも、量子力学、触媒表面の吸着と反応速度、酵素反応と阻害が一問に含まれます。「生命科学に近い酵素だけを解く」ことはできず、第1問全体を一枚の答案として仕上げる必要があります。
バイオマテリアルやケミカルバイオエンジニアリングを志望する場合も、有機反応や生化学だけでなく、熱力学、速度論、錯体、材料構造を学びます。主力二分野を決めた後、第三分野も問題の選択判断ができる程度には読めるようにし、開始十分で二問を決める練習をします。
本書の提案:三年度分を時間付きで比較して決定する
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
最初から研究室の分野名だけで科目を決めず、数学、物理学、化学を各一年度、制限時間の半分で見ます。解けた小問数だけでなく、①問題文を読み切れたか、②途中式・図・単位を答案に残せたか、③残り二か月で不足分を埋められるか、④卒業研究と並行できるか、を記録します。
次に候補二科目をそれぞれ本番時間で一年度解き、復習に必要だった時間も比べます。出願後に科目は変えられないため、五月中に決定します。大学が過去問の最低正答率や科目別合格率を公表していないので、本書は「どの科目が有利」と断定しません。
大学が公表していない情報:科目別の受験者数と得点調整
2026年8月28日時点で該当する公開一次資料に記載がないため、数値や条件を推測で補っていません。
大学は、バイオエンジニアリング専攻受験者のうち、数学、物理学、化学を何人が選んだか、科目ごとの平均点、最高点、合格者の選択割合を公表していません。科目間で得点を調整する具体的な式も、公開した入試案内にはありません。
本書の提案:科目名の印象ではなく時間内に書ける答案で選ぶ
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
前年問題の見た目だけで「化学は易しい」「数学は不利」と決める根拠はありません。公開されている問題構成と自分の答案を使い、制限時間内に結論の根拠まで書ける科目を選びます。
三つの研究計画例を具体的な問いへ直す
大学が示した答案ではなく、教員の公開研究から本書が作る練習例です。
本書の提案:野地研究室を想定した研究計画例
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
問いを「ATP合成酵素を研究したい」から、「回転子の構造改変が、一回転当たりのプロトン利用数、ATP生成速度、回転の停止時間へどう影響するか」に変えます。野生型と変異体を用意し、同じ基質・膜電位条件で回転を1分子計測し、ATP生成量を別の定量法で測ります。回転速度だけが上がりATP生成が増えない場合は、機械運動と触媒反応の結合効率が変わった可能性を検討します。
五分発表では、ATP合成酵素の一般説明を長くせず、既存研究が変換比の改変を示した点、その次に自分がどの構造と動態を比較したいかへ進みます。実際の変異体設計と装置利用は指導教員との相談が必要であり、この例は大学や研究室が募集している研究題目ではありません。
本書の提案:原田研究室を想定した研究計画例
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
問いを「手術ロボットを自動化したい」から、「網膜手術で器具先端の自律位置補正を加えたとき、組織への最大力と操作時間を減らしながら、術者が介入できる状態を保てるか」に変えます。患者モデルとセンサを使い、手動、位置補正のみ、共有自律の三条件で、軌跡誤差、最大力、所要時間、介入回数を比較します。熟練者と初学者を分ければ、支援が技能差をどう変えるかも調べられます。
安全条件、緊急停止、画像の遅延、モデルと実組織の差を限界として示します。ロボットの精度だけでなく、医師が状況を理解して介入できる設計を評価対象に入れると、医工連携とレギュラトリーサイエンスの必要性まで説明できます。これは本書の練習例で、研究室が実施を約束する題目ではありません。
本書の提案:カブラル研究室を想定した研究計画例
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
問いを「ナノ粒子でがんを治したい」から、「粒径と表面電荷を独立に調整した高分子ミセルが、膵臓がんの厚い間質を通過し、腫瘍細胞へ到達する距離と薬物放出へどう影響するか」に変えます。同じ薬物量で複数のミセルを作り、血清中安定性、細胞取り込み、三次元腫瘍モデル内の浸透距離、細胞毒性を順に測ります。
粒径が小さいほど常に良いとは限りません。血中での安定性、腎排泄、薬物保持、腫瘍内拡散の間に両立しない条件があり得ます。どの指標を優先し、どの段階で設計を絞るかを書きます。この例も本書が公開研究から作った練習であり、大学公表の研究計画や受入保証ではありません。
本書の提案:研究経験が浅い場合は既知と未経験を分ける
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
卒業研究が始まったばかりでも、立派に見せるために経験していない装置や解析を書いてはいけません。「細胞培養は経験があるが高分子合成は未経験」「Pythonで画像解析をしたがロボット制御は未経験」のように、できることと学ぶことを分けます。次に、未経験分野を学ぶため、入学前に読む教科書、再現する計算、練習する実験操作を一つずつ挙げます。
通常口述で方法を問われたときは、装置名を暗記するより、何を入力し、何を測り、何と比較するかを答えます。研究計画は完成済みの実施契約ではありませんが、仮説を検証できる筋道が必要です。
本書の提案:N2程度の日本語でも伝わる短い文にする
大学が指定した答案や唯一の準備法ではなく、公開された一次資料に基づく本書の提案です。
一文には一つの主張だけを置きます。「本研究は高齢化社会における未来型医療の実現に資する革新的研究基盤の構築を目的とする」と書くより、「網膜手術では、器具が組織へ強く触れると損傷が起こる。私は、器具先端の力を測り、危険な力になる前にロボットが動きを補正する方法を研究したい」と書く方が、対象、問題、方法が伝わります。
専門用語を使う場合は、最初に短く説明します。略語は最初に正式名を書きます。口述では、質問を聞き取れなかったときに推測で答えず、「〇〇についての質問という理解でよいでしょうか」と確認します。
本書による説明:必要なページだけ読む人にも結論を再掲する
複数の一次資料を比べ、受験生が制度と研究内容を一緒に読める形へ本書が整理した説明です。
一般入試では、英語公式スコア、出願時に選ぶ数学・物理学・化学の一科目、通常口述、提出書類を総合して選抜します。特別口述を希望する場合は、出願時に成績集計表と研究計画を追加し、書類通過後に約三十分の口頭試問を受けます。選抜されても免除は筆記だけで、九月の通常口述は必須です。
志望指導教員は少なくとも第十志望まで選びます。受入候補は2027年度入試案内pp.19〜20の修士指導教員リストから選びます。通常口述の研究計画とスライドは8月28日17時まで、発表は五分以内です。この段落は、前の章を読まずにこのページだけ開いた受験生、保護者、進路担当者が制度を取り違えないための再掲です。
この章で確認した一次資料
公開本文の作成にあたり、以下の資料を確認しました。入試条件は変更されるため、出願時は必ず大学の最新情報と照合してください。
- 令和9(2027)年度 東京大学大学院工学系研究科 修士課程学生募集要項
東京大学|資料:2026-04-03|確認:2026-08-28|参照箇所:1〜12頁
- 2027年度 バイオエンジニアリング専攻 修士課程入試案内
東京大学|資料:2026-04-27更新|確認:2026-08-28|参照箇所:2〜20頁
- 2026年度 工学部・工学系研究科便覧
東京大学|資料:2026年度|確認:2026-08-28|参照箇所:大学院共通事項、バイオエンジニアリング専攻授業科目表
- 2026年度バイオエンジニアリング専攻時間割(S2)
東京大学|資料:2026-02-17版|確認:2026-08-28|参照箇所:Overview科目、輪講、特別実験・演習
- 2026年度 大学院入学試験問題 化学
東京大学|資料:2025年度実施・2026年度入学|確認:2026-08-28|参照箇所:表紙、4頁 第1問I
- 2026年度 大学院入学試験問題 数学
東京大学|資料:2025年度実施・2026年度入学|確認:2026-08-28|参照箇所:表紙、全6問
- 2026年度 大学院入学試験問題 物理学
東京大学|資料:2025年度実施・2026年度入学|確認:2026-08-28|参照箇所:表紙、力学・電磁気学
- 2026年度 工学系研究科入学試験結果
東京大学|資料:2026年度|確認:2026-08-28|参照箇所:1頁 修士課程バイオエンジニアリング専攻
- 野地博行 教員紹介
東京大学|資料:2026-03-05|確認:2026-08-28|参照箇所:役職、分野、研究目的、研究テーマ
- 自然界の限界を超えるエネルギー変換機能を持つATP合成酵素の開発
東京大学|資料:2025-07-04|確認:2026-08-28|参照箇所:研究概要、論文情報、DOI
- 原田香奈子 教員紹介
東京大学|資料:2026-03-05|確認:2026-08-28|参照箇所:役職、分野、研究目的、研究テーマ
- 機械工学専攻 原田香奈子 2026年度大学院生向け研究テーマ
東京大学|資料:2026年度|確認:2026-08-28|参照箇所:所属専攻、同資料での受入課程、手術ロボット・VR・実験自動化の研究例、関連論文
- カブラル オラシオ 教員紹介
東京大学|資料:2026-03-06|確認:2026-08-28|参照箇所:役職、分野、研究目的、研究テーマ
- 長期兵糧攻めによる難治性膵臓がんの克服
東京大学|資料:2025-11-05|確認:2026-08-28|参照箇所:研究概要、Nature Biomedical Engineering論文情報