第5章 独自練習問題と解答例
東京大学 大学院工学系研究科 システム創成学専攻の院試対策講座から、公式過去問ではない四つの練習問題で、測定、監視、不確実性、社会データの研究設計を鍛えます。
- 対象年度
- 2027年度
- 公式情報確認
- 2026年8月28日
- 公開本文
- 1,662字
- 参照資料
- 10件
独自問題1 CFRP損傷検出の検証
高い正答率という一数値を、再現可能な検証計画へ直します。
本書の独自問題
これは大学が公表した過去問ではない、本書独自の練習問題です。原著論文の研究方法と2026年度過去問の利点・限界・社会実装型設問を参考にし、数値と設定は架空です。2027年度予想でもありません。
あるレーザー超音波法が、同じCFRP板から切り出した測定点120点で95%の正答率を得たとする。この結果だけでは未知の航空部材へ使えると結論できない理由を二つ挙げ、独立検証を設計せよ。損傷の有無、損傷寸法、温度、固定条件をどう割り付け、どの指標で比較するかを示すこと。
本書の解答例
唯一の正解ではなく、データ漏洩、クラス不均衡、環境変動、比較基準を含む答案骨格の例です。
第一に、同じ板の測定点を無作為分割すると、材料・製造・固定条件の癖が学習側と試験側へ漏れ、未知部材への性能を過大評価し得る。板単位で学習・調整・最終試験を分ける。第二に、正答率は損傷なしが多いと高く見えるため、感度、特異度、適合率、損傷寸法別検出率を報告する。温度と固定条件は層別し、最終試験は解析者に正解を隠す。既存の非破壊検査を比較基準にし、誤検出時の再検査手順も評価する。
本書の採点観点
公式採点基準ではなく、本書が示す自己点検項目です。
良い答案は、95%を否定するだけでなく、何が未知条件かを定義し、試験体単位の分割、対照法、複数指標、盲検、環境条件、失敗後の運用を一つの検証系にします。論文にない性能値や設備条件を創作しないことも評価します。
独自問題2 PASSとDASの重合・異常検出
S/N改善の式と、現場の誤報対策を一つの答案にします。
本書の独自問題
これは大学が公表した過去問ではない、本書独自の練習問題です。PASS・DAS論文と2026年度過去問の限界・新技術型設問を参考にしています。
各回の観測をx_i(t)=s(t)+n_i(t)とし、信号sは同じ、雑音n_iは平均0、互いに独立、分散σ²と仮定する。N回平均したとき雑音の標準偏差がどう変わるか説明せよ。さらに、CO2貯留層の変化と装置・季節変動を区別する連続監視計画を提案せよ。
本書の解答例
仮定内の導出と、仮定破れを含む監視計画の解答例です。原著論文の数値結果を転載していません。
平均雑音はN分の1を掛けた雑音和で、その分散は独立性よりσ²/N、標準偏差はσ/√Nとなる。したがって同じ信号を重ねれば理想条件でS/Nは√N倍改善する。ただし現場雑音が相関すればこの式は崩れる。注入前の基準期間、同一震源条件、複数深度、気象・稼働記録、既知イベントでの校正を用意し、変化量を基準分布と比較する。閾値超過時は別時刻・別手法で再測定し、漏洩と即断しない。
本書の採点観点
公式採点基準ではなく、本書の自己点検項目です。
式変形だけで終わらず、独立・同分散・信号再現性という仮定を言葉にし、相関雑音での破れ、基準観測、補助変数、再測定まで書けるかを確認します。検出対象と意思決定を結ぶことがシステム設計です。
独自問題3 高価なシミュレーションの積分
計算予算、誤差、仮定を比較し、手法選択を説明します。
本書の独自問題
これは大学が公表した過去問ではない、本書独自の練習問題です。準モンテカルロ原著論文と2026年度過去問の考え方・限界型設問を参考にしています。
不確実な入力Uに対する高価なシミュレーションf(U)の平均を求めたい。通常のMonte Carlo推定の標準誤差を標本標準偏差sと標本数Nで表せ。次に、複数のランダム化QMC推定値の中央値を使う考え方が、どの不安に対処し得るか、計算費用と保証条件を含めて説明せよ。
本書の解答例
基礎式と原著論文の狙いを組み合わせた答案例です。定理の完全な証明や無条件の優越性を主張しません。
独立標本を使う通常のMonte Carloでは、平均推定の標準誤差はs/√Nで見積もる。Nを4倍にしても誤差は典型的に半分なので、評価一回が高価だと負担が大きい。ランダム化QMCは空間をより均等に覆う点列を複数作り、各推定値の中央値を取ることで外れた推定の影響を抑え、確率的な誤差保証を構成する。ただし点数×反復数の総費用、ランダム化の独立性、関数の滑らかさ等の仮定を示し、常に高速とは結論しない。
本書の採点観点
公式採点基準ではなく、本書の自己点検項目です。
手法名の説明ではなく、推定対象、評価回数、ばらつき、失敗確率、仮定、比較基準を明記します。「中央値だから正確」とだけ書かず、なぜ複数推定をまとめるのか、どの費用を追加で払うのかを説明します。
独自問題4 SNSの先行を因果と呼べるか
観測上の時間差から、反証可能な因果検証へ進みます。
本書の独自問題
これは大学が公表した過去問ではない、本書独自の練習問題です。計算社会科学の原著論文と2026年度過去問の別検証型設問を参考にした架空問題です。
ある話題についてSNS投稿数の増加がテレビ報道より2日早かった。この観測だけで「SNSがテレビ報道を引き起こした」と結論できるか。少なくとも三つの代替説明を挙げ、利用可能な観測データで因果主張を強める検証を一つ設計せよ。
本書の解答例
唯一の正解ではなく、交絡と反証条件を明示した答案骨格です。原著論文の結論を因果へ拡張していません。
時間的に先行するだけでは因果を確定できない。共通の外部事件がSNSとテレビの両方を動かした、テレビ局が放送前から取材情報を公開した、利用者層と投稿アルゴリズムが変わった、曜日や別ニュースが放送を遅らせた、という説明がある。検証例として、同程度の話題を対照群にし、外部事件の前後でSNSの急増がテレビ報道量へ与える差を差の差で比較する。事前傾向、話題選択、別媒体での再現、結果が変わる未観測交絡の強さも点検する。
本書の採点観点
公式採点基準ではなく、本書の自己点検項目です。
相関と因果を区別し、代替説明を具体化し、比較単位、処置、対照、観測期間、結果指標、仮定、反証条件を示します。差の差という名称だけでなく、介入前の傾向が比較可能かを説明できることが重要です。
この章で確認した一次資料
公開本文の作成にあたり、以下の資料を確認しました。入試条件は変更されるため、出願時は必ず大学の最新情報と照合してください。
- 概要
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026-08-28|確認:2026-08-28|参照箇所:教育理念、身に付ける能力、専攻長
- 専門試験(口述試験)出題意図
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026-04-21|確認:2026-08-28|参照箇所:専門口述で評価する能力
- 2026年度専門課題 岡部洋二
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026年度入試|確認:2026-08-28|参照箇所:PDF p.1~2。共通条件と個別設問
- 2026年度専門課題 合田隆
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026年度入試|確認:2026-08-28|参照箇所:PDF p.1~2。共通条件と個別設問
- 2026年度専門課題 辻健
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026年度入試|確認:2026-08-28|参照箇所:PDF p.1~2。共通条件と個別設問
- 2026年度専門課題 鳥海不二夫
東京大学大学院工学系研究科 システム創成学専攻|資料:2026年度入試|確認:2026-08-28|参照箇所:PDF p.1~2。共通条件と個別設問
- Impact damage detection in woven CFRP laminates based on a local defect resonance technique with laser ultrasonics
Mechanical Systems and Signal Processing|資料:2024|確認:2026-08-28|参照箇所:書誌・抄録、DOI 10.1016/j.ymssp.2023.110929
- Signal propagation from portable active seismic source (PASS) to km-scale borehole DAS for continuous monitoring of CO2 storage site
Greenhouse Gases: Science and Technology|資料:2024|確認:2026-08-28|参照箇所:14巻、p.4~10、書誌・抄録
- A Universal Median Quasi-Monte Carlo Integration
SIAM Journal on Numerical Analysis|資料:2024|確認:2026-08-28|参照箇所:書誌・抄録、DOI 10.1137/22M1525077
- Breaking the spiral of silence: News and social media dynamics on sexual abuse scandal in the Japanese entertainment industry
PLOS ONE|資料:2024|確認:2026-08-28|参照箇所:書誌・抄録・2025年訂正表示、DOI 10.1371/journal.pone.0306104