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第6章 独自演習―水素製造を単位と境界で比較する

大阪大学 大学院 工学研究科 環境エネルギー工学専攻の院試対策講座から、公式化学過去問の数値を起点に、電力量、排出係数、化学量論をつなぐ独自問題を解きます。

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第6章 独自演習―水素製造を単位と境界で比較する

公式問題と本書の拡張計算を分け、法定報告係数とライフサイクル排出を混同しません。

本書の提案

設問:水電解1 kg-H2の電力量とCO2を求める

設問の構成と1 kgへの拡張は本書独自で、大阪大学が公表した過去問ではありません。大学公式過去問、政府係数、NIST分子量は入力値だけを支えます。

【本書独自問題】この設問は、大阪大学が公表した過去問ではなく、本書が学習用に作成した独自問題です。水素1 molの生成で2 molの電子が移動する水電解装置を考えます。公式化学過去問と同じく、ファラデー定数F=9.65×10^4 C/mol、装置電圧1.65 V、標準ギブズ自由エネルギーΔG°=237 kJ/molを使います。さらに、NISTのH2分子量2.01588 g/mol、CO2分子量44.0095 g/mol、環境省資料の全国平均係数0.000423 t-CO2/kWhを使います。

  1. 1 mol-H2当たりの電気エネルギー
  2. ΔG基準の効率
  3. 1 kg-H2当たりのkWh
  4. 電力由来CO2
  5. 水蒸気改質の化学量論上の直接CO2
  6. 両者が等しくなる電力係数

以上の六つを求めてください。

本書の提案

立式:電荷、物質量、エネルギーの単位を順にそろえる

公式問題の式と入力値を起点に、1 kgへの単位変換と比較式を本書側で提案しました。

本書の解答手順は設問番号に対応させます。

  1. 電気エネルギー:W=nFV に n=2 を入れ、W=2×9.65×10^4×1.65=318450 J/mol=318.45 kJ/mol。
  2. 効率:公式問題と同じ定義で 237/318.45×100。
  3. 1 kg換算:1000/2.01588=496.061 mol とし、318.45 kJ/molを掛け、1 kWh=3600 kJ で割る。
  4. 電力由来CO2:得られたkWhへ0.423 kg-CO2/kWhを掛ける。
  5. 水蒸気改質:CH4+2H2O→CO2+4H2 から、44.0095/(4×2.01588) を求める。
  6. 損益分岐:設問5の直接CO2を設問3のkWhで割る。
本書の提案

計算結果1~4:43.88 kWh/kg-H2、18.56 kg-CO2/kg-H2

公式解答との一致を確認した部分と、本書が提案する1 kg・CO2換算を分けて再計算しました。

1 mol-H2当たりの電気エネルギーは318.45 kJ、ΔG基準の効率は74.42%で、公式化学問題の丸め値318.5 kJ/mol、約74.4%と一致します。1 kg-H2は496.061 molなので、必要電力量は318.45×496.061/3600=43.8808 kWh/kg-H2です。全国平均係数0.423 kg-CO2/kWhを仮に掛けると、43.8808×0.423=18.5616 kg-CO2/kg-H2です。公式解答と一致する最初の二値を除き、1 kg換算と電力由来CO2は、本書が公式値と政府・NIST資料から独立に導出した試算です。設問5と6は、次の二ブロックで係数の意味を確認してから計算します。

本書による説明

0.423 kg-CO2/kWhは法定報告用の全国平均係数

環境省発表の制度上の用途と係数PDFの数値を確認し、本書での使い方と対象外の解釈を分けました。

環境省は、この係数群を、地球温暖化対策推進法(温対法)の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度で、他人から供給された電気の使用に伴うCO2を算定するための係数と説明しています。資料の全国平均係数0.000423 t-CO2/kWhをkgへ換算すると0.423 kg-CO2/kWhです。これは水素製造設備の実測値、発電設備の建設・廃棄まで含むライフサイクル係数、追加需要による時刻別の限界排出係数、関西の特定電力メニューの係数ではありません。本演習では、単位と感度を学ぶための仮定としてこの値を使います。

本書による説明

水蒸気改質の反応式だけなら直接CO2は5.46 kg/kg-H2

公式反応式とNIST分子量から化学量論比と損益分岐係数を本書側で再計算しました。

公式化学過去問の二段階反応を足すと、CH4+2H2O→CO2+4H2です。NIST分子量を使えば、化学量論上の直接CO2は44.0095/(4×2.01588)=5.45785 kg-CO2/kg-H2です。電解側の43.8808 kWh/kg-H2と等しくなる電力係数は5.45785/43.8808=0.12438 kg-CO2/kWhです。この比較では、電力係数が約0.124を下回ると、電解の購入電力由来CO2が、改質反応そのものから出る直接CO2より小さくなります。いずれも本書による境界を限定した導出です。

本書の提案

比較の境界をそろえないと結論を誤る

本書独自演習のシステム境界と効率定義を明示する誤答防止説明です。

18.56という電解側の値には、ここで仮定した購入電力の報告係数しか入っておらず、水処理、補機、圧縮、貯蔵、輸送、電解装置の製造・廃棄は含みません。5.46という改質側の値は化学量論上の直接CO2だけで、改質炉へ供給する熱、天然ガスの採掘・輸送、メタン漏えい、精製、圧縮、CO2回収は含みません。また74.4%は公式問題で定義されたΔG÷投入電気エネルギーで、水蒸気の凝縮熱を含む高位発熱量(HHV)基準、凝縮熱を含まない低位発熱量(LHV)基準、設備全体効率と無条件に同じではありません。「水電解は常にゼロ排出」「改質は必ず5.46」と一般化しないことが本書の誤答防止ポイントです。

本書による説明

感度分析:電源の値を変えて結論を確かめる

本書作成の条件変更について、比例式と単位を独立に再計算しました。

本書による追加計算では、電力係数を0.050 kg-CO2/kWhとすると電解側は43.8808×0.050=2.194 kg-CO2/kg-H2、損益分岐の0.12438なら5.458 kg、全国平均の0.423なら18.562 kgです。この三点から、電解由来CO2は装置電圧だけで決まらず、電力係数へ比例することが分かります。発展問題では、装置電圧を1.50 Vまたは1.80 Vへ変え、必要電力量、ΔG基準効率、損益分岐係数を再計算します。公式過去問の熱力学を単位・感度・境界の理解へ広げる、本書独自の演習です。入試の出題予告ではありません。

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REFERENCES

この章で確認した一次資料

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