院院試クラウド
出典付き・公開プレビュー

第5章 三つの研究例から問い・方法・限界を学ぶ

東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 海洋技術環境学専攻の院試対策講座から、自律型海中ロボット、北極海物理、光学計測を、プロフィールと原著論文に分けて読みます。

01

研究成果と2027年度の受入を混同しない

教員の現職、論文の実証範囲、公式発表を別々の根拠として示します。

大学公式の事実

大学公式の事実:巻俊宏准教授は海中ロボットと複数センサの統合を研究する

所属・役職・専門は東京大学の現職公式プロフィールに基づく大学公式の事実です。

巻俊宏准教授の東京大学生産技術研究所プロフィールは、海中プラットフォームシステム学を専門とし、自律型海中ロボット、水中音響、画像処理、センサフュージョンを研究すると説明します。大学院所属として海洋技術環境学専攻が明記されています。

本書による説明

本書による説明:MONACAは下田湾試験で自律航行と高度制御を確かめた

原著論文の試験条件と結果を要約した本書による説明です。

センサフュージョンは、位置、音響、画像など性質の異なる測定を組み合わせ、単独のセンサより確かな状態推定を行う考え方です。2021年の原著論文は、海氷や棚氷の下面を詳しく観測するAUV MONACAを開発し、下田湾で5日間試験したと報告します。AUVはケーブルで操縦せず、自ら航行する無人潜水機です。15のウェイポイントを順に追い、深度3 mを保つ制御と海底から高度3 mを保つ制御を切り替えて海底地形を測りました。直接の実証場所は下田湾であり、この論文だけで南極運用済みとはしません。

大学公式の事実

大学公式の事実:2025年に南極海氷下の無索航行成功が発表された

南極での航行実績と発表範囲は東京大学の2025年公式発表に基づく大学公式の事実です。

東京大学生産技術研究所は2025年6月26日、第66次南極地域観測でMONACAがリュツォ・ホルム湾とトッテン氷河沖の海氷下を、つながれたケーブルなしで航行することに成功したと発表しました。発表が『世界初』とする範囲は同海域でのAUV無索運用です。2021年の下田湾試験と2025年の南極実績を別の根拠に置き、棚氷融解の全機構を既に解明したとは書きません。

大学公式の事実

大学公式の事実:小平翼講師は北極海変動と海洋IoTセンサを研究する

所属・役職・専門は専攻の現職公式プロフィールに基づく大学公式の事実です。

小平翼講師は応用海洋物理学分野に所属し、北極海の変動、海洋IoTセンサ、地球流体力学を研究します。公式プロフィールは、2018年11月の太平洋側北極海で記録的な高水温と結氷遅延が起きた研究も紹介します。

本書による説明

本書による説明:大気の停滞パターンと暖水輸送を複数データで検討した

原著論文のデータ・結果・因果上の限界を要約した本書による説明です。

地球流体力学は、自転や密度差の影響を受ける海洋・大気の流れを物理法則で説明する分野です。2020年の原著論文は、衛星海面水温、ERA5という大気再解析、研究船みらいの観測を組み合わせ、2018年9月のブロッキング高気圧に伴う南風の偏り、太平洋からの暖水輸送、11月の結氷遅延を調べました。ブロッキングは高気圧が長く居座り、通常の大気の流れを妨げる状態です。水温とPDOの約0.7という値は相関であり、それだけで因果を証明する値ではありません。

本書による説明

本書による説明:暖水輸送の見積りと潜在遅延時間を観測値から分ける

原著論文と大学公式発表を照合し、数値の意味と限界を整理した本書による説明です。

研究科の公式発表は論文の観測と解析結果を日本語で説明し、原著論文は数値の算出条件を示します。0.70 Svは風の偏りから見積もった暖水輸送量で、Svは毎秒100万立方メートルの流量単位です。74日は一定の熱流束を仮定した潜在的な結氷遅延時間で、現実の結氷日が観測としてちょうど74日遅れたという意味ではありません。本書は、測った値、解析した値、仮定を置いて見積もった値を分けます。

大学公式の事実

大学公式の事実:髙橋朋子客員准教授は海中現場型の光学化学計測を研究する

役職・所属・研究領域は専攻の現職公式プロフィールに基づく大学公式の事実です。

髙橋朋子客員准教授は海中オンサイト化学計測分野に所属し、光を用いて海中でその場測定する化学センシング技術を研究します。

本書による説明

本書による説明:ホログラムで粒子を見つけ、ラマン分光で材質を確かめた

原著論文の装置条件・結果・実証範囲を要約した本書による説明です。

オンサイト計測は、試料を陸上の分析室へ運ぶ前に現場で情報を得る考え方です。2020年の原著論文は、長さ20 cmの水路に直径3 mmのポリスチレンとPMMAの粒を置き、785 nm・直径4 mmのレーザーを当てました。ホログラフィーで粒子の位置・形・大きさを捉え、ラマン分光で分子振動に由来する光の違いから材質を識別します。二つの方法を組み合わせた原理実証であり、自然海域のあらゆる微小粒子を連続監視できる完成済みの網ではありません。

大学が公表していない情報

大学が公表していない情報:2027年度の個別受入・主指導・設備利用

個別受入・指導形態・設備利用は確認した大学公式資料で確定できません。

三つの公式プロフィールと論文から、2027年度の各教員の受入人数、主指導の可否、MONACAや計測装置を修士学生が使用できるか、論文と同じ題材を担当できるかは確定できません。客員准教授という役職だけから主指導や研究室枠を確定することもできません。教員一覧と研究系案内は研究領域を理解する資料で、配属確約ではありません。特に客員・協力関係の役職から指導形態を推測せず、当年度の研究室受入枠と教員からの説明を優先します。

REFERENCES

この章で確認した一次資料

公開本文の作成にあたり、以下の資料を確認しました。入試条件は変更されるため、出願時は必ず大学の最新情報と照合してください。