第6章 過去問の公開範囲と、本書独自の答案練習
東京大学 大学院医学系研究科 公共健康医学専攻 専門職学位課程(2年コース・1年コース)の院試対策講座から、取得していない問題を創作せず、制度と専門知識を使う独自問題で書き方を示します。
- 対象年度
- 2027年度
- 公式情報確認
- 2026年8月26日
- 公開本文
- 2,904字
- 参照資料
- 10件
公式過去問について確認できること・できないこと
販売案内と、問題本文・解答・出題意図の公開を分けます。
大学が公表していない情報:問題本文・解答例・作問者
2026年8月26日時点の公開一次資料に記載がないため、数値や内容を推測で補っていません。
医学系研究科の入試ページは、2024年3月以降、過去の入試問題を東京大学文学部複写センターで販売すると案内しています。しかし、研究科ウェブサイトには、公共健康医学専攻について、実施日・コース・入試区分・出願分野・問題番号をそろえた問題本文、大学公表の解答例、出題意図、配点、採点基準、作問者を掲載していません。
本書は販売物を取得していないため、実在する過去問を一問ずつ解説したとは表示しません。在籍教員や担当授業だけから作問者を推定することもしません。問題原本を入手して分析する場合は、表紙と全ページを保存し、大学公表部分と本書の解説を別々の見出しにする必要があります。
本書独自問題:保険者事業の効果をどう確かめるか
統計用語だけで終わらず、問い・比較・偏り・実務利用を順に書きます。
本書の提案:独自問題と問題文の読み方
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
これは大学が公表した過去問ではありません。入試で出ると予測する問題でもありません。疫学、統計、健康医療政策を横断して考えるために本書が作った独自練習です。
独自問題:ある健康保険組合は、健診で高血圧を指摘された加入者へ保健師から受診勧奨を行った。実施から6か月後、勧奨を受けた人の受診率は60%だった。この数字だけを根拠に、事業は効果があったと言えるか。必要な比較、起こり得る偏り、追加で集める情報、結果の実務利用を説明しなさい。
問題文では、60%という結果より「この数字だけを根拠に」が中心です。効果とは何と比べた差か、対象者がどう選ばれたか、受診をどう測ったかを先に読み取ります。
本書の提案:答案の組み立て
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
第一段落で、60%だけでは因果的な効果を判断できないと結論を述べます。第二段落で、勧奨を受けなかった似た加入者、または実施前の同条件集団など、比較対象を定めます。第三段落で、重症度、年齢、既往、健康意識、連絡先の有無などが介入と受診の両方に関係する交絡を説明します。第四段落で、受診の定義、追跡不能、他の施策、費用、副作用を加えます。第五段落で、結果を誰がどの意思決定に使うかを書きます。
「無作為化比較試験をすればよい」で終わらせず、既に事業が行われているなら、実施ルールによる比較、時系列、傾向スコアなどの観察研究も候補にします。ただし、手法名は研究質問とデータ条件の後に置きます。
本書の提案:具体的な解答例
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
受診率60%という一群の結果だけでは、受診勧奨の効果があったとは判断できない。勧奨がなかった場合にも受診した人が含まれるからである。効果を考えるには、年齢、性別、血圧値、既往歴などが近い非勧奨群、または実施前の同じ基準の対象者と受診率を比べる必要がある。
さらに、勧奨対象の選び方に注意する。連絡先が登録され、保健指導へ反応しやすい人だけが勧奨を受けたなら、健康意識の差が結果へ混ざる。受診の定義も、自己申告ではなく請求データで医療機関受診を捉えるなど、測り方をそろえる必要がある。転職や保険脱退で追跡できない人の割合も示すべきである。
追加情報として、受診後の治療開始、血圧の変化、重症化、勧奨費用、苦情を集める。比較後にも受診率が上がり、費用と不利益が許容範囲なら、対象基準や連絡方法を改善しながら継続できる。差が小さい場合は、届かなかった層と介入内容を再検討する。
本書による説明:用語を短く定義する
複数の一次資料を比較し、受験生が判断できる形へ本書が整理した説明です。
比較群は、介入を受けた群の結果と比べる相手です。交絡は、介入を受けるかどうかと結果の両方に関係し、見かけの差を作る要因です。選択の偏りは、分析に入る人の選ばれ方によって結果がずれることです。追跡不能は、転職、脱退、連絡不能などで結果を確認できない状態です。傾向スコアは、観察された背景情報から介入を受ける確率をまとめ、群間差の調整に使う方法です。調整しても、測っていない要因の影響が消えるとは限りません。
本書の提案:失点しやすい書き方
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
第一は、60%を高い数字と決めつけ、比較相手を書かないことです。第二は、「バイアスがある」とだけ書き、何が介入と受診の両方に関係するかを示さないことです。第三は、傾向スコアや回帰分析という手法名を並べ、受診の定義や追跡不能を書かないことです。第四は、統計的に差があれば必ず事業を続けると結論づけ、費用や不利益、実務上の大きさを見ないことです。
読み手が18歳でも、誰と誰を比べ、どの違いが混ざり、何を追加で測るのかが分かる文章にします。専門用語は使っても、直後に具体例を置きます。
本書独自問題:1年コース志願理由を制度で説明する
経歴の長さではなく、資格・時間・学び・修了後を一つの回答にします。
本書の提案:独自問題と読む順番
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
これは大学が公表した過去問ではありません。口述の質問を再現したものでもありません。出願資格と学習計画を一貫して説明するために本書が作った独自練習です。
独自問題:4年制大学卒業後、自治体で感染症対策に4年間従事したBさんが、在職のまま1年コースを志望している。なぜ2年コースや研究修士ではなく1年コースなのか、出願資格、勤務調整、必要な科目、課題研究、修了後の役割から説明しなさい。
読む順番は、①4年制大学卒、②4年の保健医療実務、③在職継続、④1年で学ぶ理由、⑤学びたい方法、⑥課題研究は選択、⑦修了後の実務です。
本書の提案:答案の組み立てと解答例
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
第一段落で、4年制大学卒業者に必要な3年以上の実務経験へ4年間の自治体感染症対策がどう当たるかを示します。第二段落で、昼間授業を含む30単位のため、固定の学修日や業務引継ぎが必要だと述べます。第三段落で、疫学、医学データの統計解析、健康医療政策など、現在の不足を埋める科目を挙げます。第四段落で、課題研究は1年コースでは選択であり、長期の独自研究より実務能力の体系化を優先する理由を書きます。
解答例:Bさんは4年制大学卒業後、自治体で感染症対策に4年間従事しており、1年コースが求める3年以上の保健医療実務に当たる可能性が高い。現在は発生数の集計と住民対応を担うが、対策の効果を比較し、政策判断へ結び付ける疫学・統計の力が不足している。そのため、1年間で医学データの統計解析、疫学、健康医療政策を体系的に履修し、復職後に事業評価の設計を担うことを目指す。授業は昼間にもあるため、週二日の学修時間を確保し、緊急対応の代替担当を決める。課題研究は選択であり、実施する場合も利用許可を得やすい公開データまたは既存の匿名化データに範囲を絞る。長期研究そのものより、現在の実務を1年で改善する能力を得る目的が、1年コースに合う。
本書による説明:三つの書類を区別する
複数の一次資料を比較し、受験生が判断できる形へ本書が整理した説明です。
在職期間証明書は、勤務先が在職期間を証明する書類です。1年コースの実務経験を示すため、出願時に提出します。学習計画書は、在職のまま入学する志願者が、A4用紙2枚で学び方を示す出願書類です。勤務先承諾書は合格後の入学手続で提出し、在職中の大学院学修に支障がない旨を勤務先が示します。提出時期も役割も異なる三つの書類です。
本書の提案:失点しやすい書き方
大学が指定する答案や学習法ではなく、一次資料に基づく本書の提案です。
失点しやすいのは、「自治体職員だから資格がある」と職務内容と年数を書かないこと、「夜間に通う」と現行シラバスの昼間授業を無視すること、「課題研究が必修」と誤記すること、「有給休暇で対応する」とだけ書き、年間の勤務調整を示さないことです。
Bさんの経歴は資格要件に当てはまる可能性が高いものの、大学が行う認定を答案の中で自分が確定してはいけません。勤務先の承諾も、授業出席と課題時間を自動的に保証しません。制度上の要件、現実の時間、本人の目的を別々に示してから、一つの志望理由へまとめます。
この章で確認した一次資料
公開本文の作成にあたり、以下の資料を確認しました。入試条件は変更されるため、出願時は必ず大学の最新情報と照合してください。
- 大学院医学系研究科入学
東京大学|資料:2026-08-26時点|確認:2026-08-26|参照箇所:2027年度募集要項一覧、合格発表、過去問販売案内
- 令和9(2027)年度 公共健康医学専攻専門職学位課程学生募集要項
東京大学|資料:2026-05|確認:2026-08-26|参照箇所:1~7頁
- 令和9(2027)年度 公共健康医学専攻入学試験案内
東京大学|資料:2026-05-07|確認:2026-08-26|参照箇所:2~9頁
- 東京大学大学院医学系研究科規則
東京大学|資料:2026-07-01現在|確認:2026-08-26|参照箇所:第2条の2、第3条、第5条、第11条、第15条の2
- 2026年度 公共健康医学専攻シラバス
東京大学|資料:2026年度|確認:2026-08-26|参照箇所:3~6頁、14~19頁、54~61頁
- 東大SPH 教育プログラム
東京大学|資料:2026-08-26時点|確認:2026-08-26|参照箇所:教育目標、2年コース・1年コース、課題研究
- 公共健康医学専攻を構成する講座・分野・担当教員
東京大学|資料:2026-03-01現在|確認:2026-08-26|参照箇所:生物統計学、臨床疫学・経済学、精神保健学、医療コミュニケーション学ほか
- Propensity score analysis revisited
National Library of Medicine|資料:2025|確認:2026-08-26|参照箇所:Annals of Clinical Epidemiology 7(3):99-104
- 生物統計学分野 論文(英文)2025年度
東京大学 生物統計学分野|資料:2025年度|確認:2026-08-26|参照箇所:松山裕教授を含む2025年度論文
- 東大SPH 入学・進学案内
東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻|資料:2026-08-26時点|確認:2026-08-26|参照箇所:入試案内、ガイダンス、過去の入試情報