第4章 筆記試験・過去問公開状況・独自練習
東京大学 大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻(修士課程)の院試対策講座から、大学が公表した試験構成と、公開されていない過去問本文を区別し、本書独自の練習問題には明確な境界を付けます。
- 対象年度
- 2027年度
- 公式情報確認
- 2026年8月24日
- 公開本文
- 2,332字
- 参照資料
- 7件
筆記試験で確定していること
保健学と専門分野の二題、英語外部試験、小論文・口頭試問の関係を読みます。
大学公式の事実:一次試験は三種類の証拠を合わせる
募集要項・入学試験案内・規則等に明記された範囲です。
一次試験は、①TOEFLまたはIELTSの成績、②事前提出小論文、③オンライン筆記試験の三つを総合評価します。筆記は保健学と志望専門分野の2題です。一次合格者だけがオンライン口頭試問へ進みます。
この構成では、英語、文章で示す志望・準備、保健学の共通知識、分野固有の知識、口頭での説明が別々に見られます。筆記だけに集中し、小論文の引用・自己アピールや、研究テーマを口頭で説明する準備を後回しにすると、選抜全体への対応になりません。
本書による説明:保健学と専門分野を同じ答案にしない
複数の一次資料を受験生が比較しやすい形に言い換えた本書の説明です。
保健学では、研究デザイン、疫学指標、交絡・選択バイアス、測定、統計解釈、倫理、健康政策等の共通語彙を使って、現象を一般化して説明する準備が必要です。専門分野では、看護管理、家族看護、創傷、精神看護等、その分野で重要な対象・理論・技術・実装条件に踏み込みます。
例えば「看護介入が有効か」を問う場合、保健学答案では比較群、アウトカム、交絡、効果量を明示し、専門分野答案では介入の構成、看護実践への適用、患者・家族・組織の文脈、安全性を具体化します。同じ一般論を二回書くのではなく、共通方法と専門的意味を分担させます。
公式過去問について言えること・言えないこと
販売案内とウェブ公開を混同せず、問題・解答・作問者を捏造しません。
大学が公表していない情報:ウェブ上の過去問本文・解答例・出題意図
2026年8月24日時点の公開一次資料では確認できないため、推測で補っていません。
医学系研究科の公式入試ページは、過去の入試問題を東京大学文学部複写センターで販売すると案内しています。しかし、研究科ウェブサイトには健康科学・看護学専攻修士課程の問題本文、実施年度ごとの問題番号、大学公表の解答例、採点基準、出題意図は掲載されていません。本書の制作時点では販売物を購入していないため、一問ずつの問題解説を作れる根拠がありません。
作問者の氏名も大学は公表していません。教員の専門と問題を結び付ける材料がない状態で、在籍教員を作問者として推定しません。過去問を入手した後に分析する場合でも、問題の実施年度、課程、選抜区分、志望分野、問題番号を確認できる形で記録し、大学公表情報と本書の解説を分ける必要があります。
本書独自練習:看護介入研究を批判的に読む
公式問題を装わず、読み方、構成、解答例、用語、失点例を一組で示します。
本書の提案:独自練習問題と問題文の読み方
大学が指定する答案や手順ではなく、公開資料に基づく本書の提案です。
これは大学が公表した過去問ではありません。2027年度にこの問題が出ると予測するものでもありません。本書が、保健学と看護学の共通基礎を練習するために作った問題です。
独自問題:ある訪問看護事業所が、褥瘡リスクの高い高齢者へ週1回の画像評価と看護師へのフィードバックを導入した。導入前後で褥瘡発生率が10%から6%に下がったため、担当者は「介入により40%予防できた」と結論した。この結論を評価し、より妥当な研究計画を600字程度で述べなさい。
読むときは、まず「10%から6%」を4ポイント減少と相対40%減少に分けます。次に、前後比較だけで因果効果を言えるかを問います。対象者の重症度、看護師配置、予防用品、季節、記録精度が同時に変わっていないか、比較群がないこと、誰が画像を評価したかを拾います。最後に、改善案として比較対象、主要アウトカム、追跡期間、交絡調整、倫理を入れます。
本書の提案:答案の組み立て
大学が指定する答案や手順ではなく、公開資料に基づく本書の提案です。
600字なら、①結論、②数値の意味、③内的妥当性の問題、④改善した研究デザイン、⑤臨床的・倫理的条件の五段落にします。
第一段落では「発生率の低下は観察されたが、介入の因果効果40%とは断定できない」と答えます。第二段落で絶対リスク差4ポイント、相対リスク0.60を計算します。第三段落で前後の集団差、時間変化、測定バイアスを挙げます。第四段落で、可能なら事業所や病棟を単位とする比較試験、難しければ介入群と同時期対照群を置く前向き研究を提案します。第五段落で、褥瘡の定義、盲検評価、欠測、患者負担、画像の個人情報を扱います。
本書の提案:具体的な解答例
大学が指定する答案や手順ではなく、公開資料に基づく本書の提案です。
観察された褥瘡発生率は10%から6%へ低下しており、絶対リスク差は4ポイント、相対リスクは0.60である。しかし、単純な導入前後比較では、対象者の要介護度、栄養状態、体位変換、スタッフ数、予防用品、季節等の変化を介入効果と分離できない。画像評価を導入したことで発見・記録の仕方が変わる測定バイアスもあり得るため、「40%予防できた」という因果的結論は強すぎる。
より妥当な計画では、同じ時期に通常ケアを続ける比較事業所を置き、導入前後の変化の差を評価する。対象者の褥瘡リスク、栄養、活動性、既存創傷を開始時に測定し、発生の定義と観察期間を統一する。可能なら判定者に介入の有無を知らせず、主要評価項目を新規褥瘡発生率、副次評価を重症度・治癒日数・看護負担とする。画像の同意、保管、匿名化を定め、効果量と信頼区間を示したうえで、臨床上意味のある差かを判断する。
本書による説明:用語を短く定義する
複数の一次資料を受験生が比較しやすい形に言い換えた本書の説明です。
絶対リスク差は二群の発生割合の引き算で、この例では10%-6%=4ポイントです。相対リスクは介入後の発生割合を導入前で割った値で0.60です。交絡は、介入と結果の両方に関係する別要因が、見かけの関連を作ることです。測定バイアスは、評価方法や記録方法の違いによって結果が系統的にずれることです。内的妥当性は、観察された差を対象研究の中で因果効果としてどこまで信頼できるかを指します。
用語名だけを並べるのではなく、この事例のどこに当たるかを一文で結び付けると、知識を使えていることが伝わります。
本書の提案:失点しやすい書き方
大学が指定する答案や手順ではなく、公開資料に基づく本書の提案です。
失点しやすいのは、第一に「40%低下したから有効」と相対値だけで断定することです。第二に「ランダム化比較試験をすべき」とだけ書き、比較単位、アウトカム、期間、倫理を書かないことです。第三に、交絡・バイアス・信頼区間という語を並べても、何が交絡し、どの測定が変わるのか説明しないことです。
反対に、前後比較から分かる範囲を認めたうえで、因果推論の限界を示し、現場で実行可能な改善案を具体化すると答案が安定します。看護研究では効果だけでなく、患者負担、個人情報、看護師の作業量、介入の実施忠実度も含めてください。
この章で確認した一次資料
公開本文の作成にあたり、以下の資料を確認しました。入試条件は変更されるため、出願時は必ず大学の最新情報と照合してください。
- 令和9(2027)年度 修士課程 学生募集要項
東京大学|資料:2026-05-07|確認:2026-08-24|参照箇所:表紙、2~7頁
- 大学院医学系研究科入学
東京大学|資料:2026-08-24時点|確認:2026-08-24|参照箇所:令和9年度入試、日程、過去の入試問題
- 2026年度 医学系便覧・シラバス・開講科目表
東京大学|資料:2026年度|確認:2026-08-24|参照箇所:20~26頁、39~42頁
- 医学系研究科の学位授与方針・教育課程方針・入学者受入方針
東京大学|資料:2026-08-24時点|確認:2026-08-24|参照箇所:医学系研究科(修士課程)
- 令和9(2027)年度 健康科学・看護学専攻 修士課程 入学試験案内
東京大学|資料:2026-05-07|確認:2026-08-24|参照箇所:2~7頁
- 仲上豪二朗 教員紹介
UTOKYO NURSING|資料:2026-08-24時点|確認:2026-08-24|参照箇所:専門、研究テーマ、附属病院との共同研究
- Relationship between gene expression associated with cellular senescence in cells from discarded wound dressings and wound healing
National Library of Medicine|資料:2024|確認:2026-08-24|参照箇所:Journal of Tissue Viability 33(4):726-731